日本通信販売協会(JADMA)は8月28日、2025年度の通信販売市場売上高を発表した。売上高は前年比5.9%増の15兆4085億円で、金額では8585億円増えた。市場規模が15兆円を超えたのは初めてである。同協会は会員375社への実態調査の先行集計に、有力な非会員431社の推計を加えて算出している。
背景
今回の数字は「第44回通信販売企業実態調査」の回答のうち、売上部分を先行集計したものである。調査期間は2026年6月25日から8月17日。会員企業の情報に、各種調査から推計した有力非会員431社の売上を加えて、市場全体を出す方式をとっている。
リリースは、市場を押し上げた要因として、品ぞろえの豊富さ、利便性、価格競争力を備えた事業者を挙げている。物価が上がるなかで消費者の価格意識が高まり、この3つを備えた事業者に売上が集まった構図である。
新しい動きとしては、AIの活用による業務効率化と顧客体験の向上、越境ECの利用拡大が挙げられている。一方で、消費者トラブルの増加にも触れている。市場が広がるなかで、事業者側の体制が追いついていない領域があるという認識である。
なお、この統計は「通信販売」の売上高であり、インターネット通販だけを対象としたものではない。経済産業省が公表する電子商取引に関する市場調査とは、母集団も定義も異なる。数字を並べて比較する際は注意が要る。
事業者への影響
第一に、自社の伸びを測る物差しになる。市場全体が5.9%増である以上、自社の売上が前年並みなら、市場のなかでは相対的に縮んでいる。5%台の成長は「据え置き」ではなく、追いつくべき水準だと捉えたい。年度の予算を組み直す際の基準線として使える。
第二に、全体の数字と自社の実感の差である。金額では8585億円増えており、市場が縮んだわけではない。ただし、この統計は会員375社と有力非会員431社を積み上げたものだ。規模の大きい事業者の動きが全体を左右する構造にある。中小規模の事業者が同じ伸びを実感しているとは限らない。差があるなら、どの商品群やどの販路で差がついているかを見たい。
第三に、価格競争力の扱いだ。リリースが挙げた3要素のうち、品ぞろえの豊富さと利便性は、規模の大きい事業者が有利な領域である。中小事業者が同じ土俵で価格を下げ続ければ、利益が先に尽きる。特定領域での品ぞろえの深さ、購入後の支援、再購入の設計など、価格以外の軸で勝ち筋を作る必要がある。
第四に、消費者トラブルへの言及である。業界団体が自ら課題として挙げた点は、行政の関心とも重なる。表示と実態のずれ、解約の手順、問い合わせへの返答期間は、あらためて点検しておきたい。市場が伸びている局面ほど、対応の遅れが目立つ。
今後の見通し
今回の数字は先行集計である。実態調査の全体結果が後日公表されれば、分野別や販売手法別の内訳が見える可能性がある。内訳が出れば、自社の位置づけはより正確に測れる。
15兆円という水準に達したあと、成長率がどこで落ち着くかは見通せない。物価の動きと消費者の価格意識がどう変わるかに左右される可能性がある。越境ECの拡大が続くかどうかも、為替や各国の制度に影響される。
AIの活用が業務効率化にとどまるのか、売上そのものを押し上げるのかは、現時点の統計からは判断できない。次年度以降の調査で分けて示されるかどうかが、ひとつの見どころになる。
出典
- 日本通信販売協会「通販・EC市場、15兆円規模へ」(2026年8月28日・PDF)https://jadma-production.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/pdf/statistics/20260828press2025marketrize.pdf
- 日本通信販売協会「統計・出版」https://jadma.or.jp/contents/statistics
- 通販通信ECMO「2025年度通信販売市場15.4兆円に…JADMA」(2026年8月31日)https://www.tsuhannews.jp/news/detail/75872





