アデランスの子会社で女性用ウィッグ・医療用ウィッグのネット販売を手がけるライツフォルが、過去にステルスマーケティングを行っていたと公表した。専門紙の通販通信ECMOが2026年9月8日に報じた。同社は2019年7月から12月にかけて外部業者に委託し、特定のQ&Aサイトで一般ユーザーの口コミと思わせる書き込みをしていたという。アデランスはグループ全体で広告・宣伝活動の社内審査手続きを強化し、外部委託先の事前審査も強化するとしている。
背景
景品表示法によるステルスマーケティングの規制は2023年10月1日に始まった。指定告示の名称は「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」。広告であるにもかかわらず広告と分からない形で出すことを禁じている。SNSの投稿、商品レビュー、記事体の広告などが対象になる。
消費者庁は、規制の対象となるのは商品・サービスを供給する事業者、つまり広告主だと明示している。投稿したインフルエンサーや、実際に書き込みを行った外部業者ではなく、依頼した側が責任を負う構造である。委託先に任せていたという説明は、免責の理由にならない。
ライツフォルの行為は2019年で、規制の施行前にあたる。現行のステマ規制をさかのぼって適用することはできない。それでも公表と謝罪に至ったのは、ウィッグのようにネットの口コミが購買判断を強く左右する商材で、口コミの信頼性が事業の前提になっているためとみられる。
事業者への影響
この件で重いのは、法適用の可否ではない。7年前の施策が今になって表に出た、という事実のほうである。当時の担当者はすでに社内にいないことが多い。それでも公表を迫られる。過去の外注施策を把握できているかどうかが、そのまま経営リスクになる。
洗い直す対象は次のあたりになる。
- 外部業者に委託した口コミ・レビューの投稿
- 高評価を条件に特典を付けるレビュー依頼
- アフィリエイト記事や比較サイト記事の広告表記の有無
- SNSやインフルエンサーへの投稿依頼と、その表記ルール
- Q&Aサイトや掲示板、まとめサイトへの書き込み
確認の起点は、契約書と発注書、そして請求の内訳である。「口コミ対策」「評判改善」といった曖昧な名目の発注が過去にないかを見る。委託先がさらに別の業者へ再委託していた場合、自社では作業の実態を把握できていないことがある。当時の担当部署が広告部門ではなく、EC運営部門やカスタマーサポート部門だった例もある。
投稿が今も残っている場合の扱いも整理したい。規制の施行前に行われたものでも、現在それを読む消費者は現在の表示として受け取る。削除依頼が可能かどうか、プラットフォーム側の手続きを確認しておく。生成AIが検索結果や回答で口コミを引用する場面が増えており、古い投稿が再び露出する経路は以前より多い。
今後の見通し
本件について消費者庁が措置命令などの法的措置を取るかは現時点で示されていない。規制の施行前の行為であり、ステマ規制の適用は難しいとみられる。
一方で、同種の自主公表が続く可能性はある。規制の施行から3年近くが経ち、企業内での過去の点検が進んでいる。公表するかどうかの判断基準を持たない企業ほど、外部からの指摘で対応が後手に回りやすい。
実務として求められるのは、広告表示の社内審査に外注先の作業実態まで含める運用である。成果物の確認だけでは、誰がどこに何を書いたかまでは分からない。発注時に投稿先と投稿内容の報告を義務づけ、再委託の可否を契約で定めておくことが、次の7年後を作らない条件になる。
出典
- 通販通信ECMO「ウィッグ通販のライツフォル、過去にQ&Aサイトでステマ」2026年9月8日 https://www.tsuhannews.jp/news/detail/75903
- 消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/stealth_marketing





