Amazonは9月24日、マルチチャネルフルフィルメント(MCF)を使う事業者が、自社のECサイト上でPrime配送とPrimeバッジを提供できるようにしたと発表した。買い物客はAmazonにログインすることなく、自社サイトの配送方法の選択肢としてPrimeを選べる。あわせて、MCFの手数料を割り引く「MCF Preferred Pricing」も始めた。対象はいずれも米国内で販売し、米国内へ配送する事業者である。
背景
MCFは、Amazonの物流網を自社ECやほかの販売チャネルの出荷に使う仕組みである。Amazonの説明では、11か国で提供されている。これまで自社サイトでPrimeの配送体験を出すには「Buy with Prime」を使う形が中心だった。今回はMCFの側に同等の機能が載った。
条件が踏み込んでいる。Amazonは、Prime配送の有効化に追加費用はかからず、出荷手数料は開始時点でMCF標準と同水準だとしている。決済処理、注文管理、ストアポリシーを変更する必要もない。顧客データと返品方針は事業者側に残る。導入は、Shopify向けアプリ、Selling Partner API、対応する外部サービスのいずれかで行う。
もう一方のMCF Preferred Pricingは、FBA利用者がAmazon以外の販路でMCFを使う場合に、出荷手数料を割り引く仕組みである。Amazonは最初の6か月で15〜25%の削減になるとし、契約や長期の縛りはないと説明している。出荷量が増えるほど割引率が上がる設計だ。
なお米国のMCF手数料には、燃料・物流サーチャージが3.5%加算される。繁忙期(2026年10月15日〜2027年1月14日)はこれより高い率が適用される。
事業者への影響
日本の事業者は、この機能をまだ使えない。それでも読み取るべきことがある。
第一に、自社ECの弱点の埋め方が変わる。自社ECがモールに勝てない理由の多くは、商品でも価格でもなく配送である。いつ届くか分からない、送料がいくらか分かりにくい、返品が面倒。この不安を、自社で倉庫や配送網を持って解消するのが従来の道筋だった。今回の仕組みは、モール側の物流をそのまま自社サイトの表示に持ち込む。配送品質は、自前で積み上げる資産ではなく、借りられる部品になりつつある。
第二に、日本でも検討できる論点がある。自社ECの商品ページと注文画面に、配送の情報がどこまで具体的に書かれているか。到着予定日が日付で出ているか、送料無料の条件が1行で分かるか、返品の可否が購入前に読めるか。これは物流会社を変えなくても今日着手できる。Prime配送の表示が効くのは、結局この情報が明確になるからである。
第三に、依存のリスクだ。出荷を1社に寄せると、手数料の改定がそのまま原価に響く。今回のサーチャージ3.5%と繁忙期の上乗せは、その一例である。割引が6か月で切れる設計も押さえておきたい。物流を借りる判断には、借り先を切り替えられる状態を保つ設計が伴う。
自社ECの配送まわりで、今週点検できる項目は次の3つである。
- 商品ページに到着予定日が日付で表示されているか
- 送料無料の条件と、地域別の送料差が1画面で分かるか
- 出荷を委託している先が1社に集中していないか
今後の見通し
日本での提供時期を、Amazonは公表していない。日本でもMCF自体は提供されているため、同様の機能が展開される可能性はあるが、確定した情報はない。
国内の3PL事業者やカートシステムが、これに近い機能を用意する動きにつながる可能性もある。自社ECの注文画面に、外部の物流網の配送品質をそのまま表示する形である。現時点で確認できる発表はない。
MCF Preferred Pricingの割引は最初の6か月とされている。7か月目以降の料率は示されていない。
出典
- Amazon「Merchants can now add fast, free Prime delivery to their own websites」About Amazon(2026年9月24日):https://www.aboutamazon.com/news/retail/amazon-mcf-prime-delivery-merchant-websites
- Amazon「Offer fast, free Prime delivery on your ecommerce website」Amazon Supply Chain(対象地域・手数料・導入方法):https://supplychain.amazon.com/mcf/prime
- ネットショップ担当者フォーラム「米アマゾン、自社ECサイトでも『プライム配送』」(2026年9月28日):https://netshop.impress.co.jp/n/2026/09/28/16787
- Amazon「Amazon マルチチャネル フルフィルメント(MCF)」日本向けサイト(日本でのMCF提供):https://supplychain.amazon.co.jp/ja/


