LINEヤフーは8月18日、「Yahoo!ショッピング」のAIエージェントに関する説明会を開いた。同社によると、AIエージェント経由の取扱高比率は2026年7月時点で約20%に達した。2月の提供開始からおよそ半年で、モール流通の5分の1がAIとの対話を経由した計算になる。出店者にとっては、商品ページを「人に見せる」設計から「AIに読ませる」設計へと、作り込みの前提が変わりつつあることを意味する。
「探す前」からAIが介在
説明会に登壇したショッピングSBUプロダクトユニットリードの市丸数明氏は、利用をけん引している機能として、お得な購入日を知らせる機能と「AIおまかせ比較」を挙げた。いずれも利用率は37%で、買う前の迷いに応える用途に需要が集中している。
購入検討のさらに手前を担うのが、6月に追加された「AIお買い物メモ」だ。欲しいものを書き留めるだけでAIが商品候補を提示する機能で、月間利用者数は6月から7月にかけて約12倍に伸びた。説明会のデモでは、学校からの持ち物案内のスクリーンショットをメモに保存すると、AIが記載条件を読み取り、「サンダル」ではなく条件により合致する「マリンシューズ」を提案する様子が示された。
同社は買い物の過程を「想起」「探索」「比較・検討」「意思決定」「配送・利用」の5段階で整理し、各段階にAI機能を配置する方針を示した。配送段階では、配送状況と見通しをAIが要約する「AIお届け予報」を9月末に提供予定。秋には着丈やサイズのデータを用いてスタイル別の着こなしを提案する「AIおまかせコーディネート」を投入する。さらに構想段階として、AIの長期記憶を用いて利用者ごとに売り場そのものを組み替える「ヤフショメイク(仮)」を掲げた。
一方、質疑では、買い物の過程自体を楽しみたい利用者もいるとして、AI利用を一律に求めるのではなく、利用者が選べる形を目指す考えも示された。
出店者向けAIは利用率48%
ストア側を支援するのが「Yahoo! EC Pilot」だ。ストアクリエイターProの上で提供され、商品情報や文章の作成、問い合わせ対応、分析などを担う。ショッピングSBUプロダクトユニットリードの河内俊介氏は、AIが店舗データから課題を見つけて次の打ち手を能動的に提示する「提案型」であること、LINE公式アカウントなどグループサービスと接続していることを特徴に挙げた。今後は、過去のLINE配信を分析して次の施策を提案する機能や、店舗データを分析して振り返りまで支援する「コンサルティングレポート(仮)」の提供を予定する。
同社によると、EC Pilotの利用率は48%。利用状況別に取扱高の前年比を比べると、利用ストアが非利用ストアを15ポイント上回ったという。インナーウエアを扱う白鳩の事例では、競合商品との比較分析をEC Pilotに相談したうえで送料無料への対応を決め、CVR(購入率)が40%増、月間販売数が20%増となったとしている。
河内氏は、AIだけで成長を実現できるわけではないとしたうえで、日々の運営判断を支えることで店舗が戦略立案や顧客との関係づくりに時間を割ける状態を目指すと述べた。
*編集部注:利用ストアと非利用ストアの15ポイント差は、同社が示した相関であり、AI利用が成長要因であることを直接証明するものではない。もともと運営体制に余力がある店舗ほど新機能を試す傾向がある点は割り引いて読む必要がある。
解説:「検索対策」の次に来るもの
取扱高の2割がAI経由という数字が示すのは、商品が選ばれる場所が検索結果一覧からAIの提案文へと移り始めているという事実だ。従来、モール内での可視性はキーワードと価格、レビュー数の設計に大きく依存してきた。だがAIが比較の観点そのものを提示する構造では、AIが参照できる形で仕様が記述されているかどうかが、候補に残れるかを左右する。
先のデモが象徴的だ。AIが「足先が覆われている」「かかとを固定できる」といった条件を照合して商品を絞り込むなら、その属性がテキストとして書かれていない商品は、たとえ条件を満たしていても候補から漏れる。商品名にキーワードを詰め込む従来型の対策は、この局面では効きにくい。素材、サイズ、用途、使用シーンといった属性をどこまで構造化して記述できているか。当面、出店者が着手すべき現実的な作業はここにある。
同時に、モール側のAIが比較と提案を担うほど、店舗独自の売り方は発揮しにくくなる。AIの提案に乗ることで露出を得るか、自社ECやSNS経由で指名買いを積み上げるか。モール依存度の高い事業者ほど、この二択への態度を早めに決めておきたい。
出典:LINEヤフー「AIエージェントで『買う』と『売る』はどう変わる? Yahoo!ショッピングが目指す新たな買い物体験」(2026年8月20日公開、取材日8月18日) https://www.lycorp.co.jp/ja/story/20260820/yjshopping_ai.html
本記事中の数値・事例は、いずれもLINEヤフーの発表に基づく。本紙による独自検証は行っていない。


