消費者庁は8月31日、令和9年度の予算・機構定員要求を公表した。一般会計の要求額は197.9億円で、令和8年度当初予算の170.5億円から27.4億円、16.1%増える。インターネット広告の監視や、特定商取引法・景品表示法の執行に充てる経費が積み増される内容である。
背景
概算要求は、各府省が翌年度に必要と考える予算を財務省に示す手続きである。査定を経て年末に政府案が決まるため、要求額がそのまま予算になるわけではない。ただし、どの分野に人と金を寄せようとしているかは読み取れる。
今回の要求で目を引くのは、デジタル分野の比重である。「デジタル消費者取引の適正化やデジタル広告の監視等」は2.7億円で、前年度の2.0億円から増える。「取引デジタルプラットフォームにおける消費者利益保護等の推進」は1.1億円で、前年度と同額である。「特定商取引法や景品表示法の周知・啓発の推進、適切な法執行等」は4.1億円で、前年度の3.1億円から1億円増える。
新規の項目もある。「詐欺的な悪質商法への対応」に2.6億円を要求した。要求資料には新規と明記されている。定員は計34名の増員を求めており、うち6名を詐欺的な悪質商法への対応に充てるとしている。
食品分野では「食品表示制度の適切な運用、機能性表示食品における信頼性確保等に向けた取組」が4.3億円である。前年度の4.2億円から、ほぼ横ばいで推移する。
事業者への影響
第一に、広告表現の点検である。デジタル広告の監視に充てる経費は2.0億円から2.7億円へ増える要求になっている。景品表示法の執行経費も増える。効果や実績をうたう表現、比較広告、「初回限定」の価格表示は、根拠資料が手元にそろっているかを改めて確かめたい。要求段階の数字であっても、当局が問題視している領域を示す材料にはなる。
第二に、定期購入の申込画面である。「詐欺的な悪質商法への対応」が新規で立ったことと、特定商取引法の執行経費が増えることは、同じ方向を向いている。解約の条件、初回と2回目以降の価格、次回配送日の表示が、最終確認画面で一覧できるかを見直しておきたい。
第三に、モール運営者との関係だ。取引デジタルプラットフォームに関する経費が引き続き計上されている。出店者の情報開示、販売者情報の表示、問い合わせ窓口の整備は、モール側から求められる水準が上がる可能性がある。出店契約の更新時に、対応が必要な項目が増えていないかを確認したい。
第四に、健康食品を扱う事業者である。機能性表示食品の信頼性確保を含む項目に4.3億円が引き続き充てられる。9月1日に完全施行された表示とGMPの新ルールの運用は、この予算のもとで進むことになる。
今後の見通し
概算要求は財務省の査定を経る。年末に政府案が固まるまで、金額は変わりうる。項目が削られる可能性も、増額される可能性もある。
一方で、要求資料に新規として立てられた項目は、その分野に人を置く意思の表れとみてよい。詐欺的な悪質商法への対応に6名を求めた点は、執行の実務が動くことを示唆する。ただし、実際にどのような手法で監視や指導が行われるかは、要求資料からは読み取れない。
インターネット広告の監視についても、対象範囲や手法が具体化されるかどうかは示されていない。事業者向けのガイドラインや説明会が用意されるかは、今後の公表を待つ必要がある。
出典
- 消費者庁「令和9年度予算・機構定員要求について」(PDF)https://www.caa.go.jp/policies/budget/assets/caa_cms_205_260831_01.pdf
- 消費者庁「予算・決算」https://www.caa.go.jp/policies/budget/
- 通販通信ECMO「消費者庁、概算要求198億円 新規施策に「詐欺的…」」(2026年8月31日)https://www.tsuhannews.jp/news/detail/75874





