消費者庁のデジタル取引・特定商取引法等検討会は9月10日、中間取りまとめを公表した。通信販売の申込み最終確認画面、解約手続き、チャットを使った勧誘の三つについて、特定商取引法の規律を広げる方向を示した。条文案と施行時期は示されていない。ただしEC事業者が日々触れているカート画面と自動送信メールが、規制の対象として名指しされた。
背景
検討会は2026年1月22日に第1回を開き、9月2日の第9回まで議論を重ねた。今回の中間取りまとめは、その到達点にあたる。基本方針として、健全な取引の利便性は確保しつつ、悪質な取引に絞って対応を強化するとした。
目を引くのは「チャット等による勧誘」という新しい概念だ。スマートフォンやパソコンの画面を通じた、特定の相手への双方向の文字情報などの送信と定義し、SNS、電子メール、ショートメッセージサービスを含むとした。事業者側から勧誘を始めた場合や、勧誘目的を告げずにチャットを開始させた場合を対象とする。これまで電話勧誘販売にしか及んでいなかった規律が、文字のやり取りにも広がることになる。
事業者への影響
実務に直結するのは次の四つだ。
- 最終確認画面:支払総額の表示義務の拡張、取引条件の分離表示の禁止、注文確定後に内容が変わる場合の変更前後の対照表示
- 電子書面:注文完了後に遅滞なく、契約内容を記した電子書面をメール等で交付する義務化。最終確認画面の記載との同一性と明瞭性の担保
- 解約・返品:返品特約のみを理由に法令上または契約上の権利がない旨を告げる行為を、新たに行政処分の対象に。解約手続きの不当な遅延や、契約手続きに比べ合理的な理由なく過度に複雑な解約手続きも規律の対象
- チャット勧誘:電話勧誘販売と同等の規律を適用。書面を受領した日から起算して8日を経過するまでのクーリング・オフ
いわゆるダークパターンも規制対象に挙がった。支払金額や分量、契約期間について、一般的な消費者が通常の注意をもって見て正確かつ容易に認識できない虚偽・不明瞭な表示。口コミ、利用状況、在庫情報、タイムセール等の虚偽表示。操作の反復や威迫的な文言で消費者を威迫し、迷惑を覚えさせ、または不安を生じさせる表示。在庫の残数や閲覧者数を演出として使っている店舗は、その表示に裏付けがあるかを確認しておきたい。
申込みは数クリック、解約は電話のみ。この設計は、提言どおりに制度化されれば処分の対象になり得る。解約導線の改修は工数がかかる。中間取りまとめの段階で着手の判断をしておくかどうかで、施行時の負荷が変わる。
今後の見通し
中間取りまとめに条文案、施行時期、法定刑の具体案は書かれていない。消費者庁は今後、実務的かつ法技術的な観点から検討を進めるとされており、最終的な制度の形は変わる可能性がある。
もう一点、モール出店者に関わる提言がある。行政処分を行った誇大広告等がプラットフォーム上に表示されている場合に、削除等を要請できる仕組みだ。個別の広告の削除を求めるか、アカウントの停止・削除を求めるかは、事案に応じて柔軟に判断するとされている。要請に応じたプラットフォーム側は、販売業者との関係で損害賠償責任を免責される。制度化されれば、出店先の判断で広告やアカウントが止まる場面が増えるとみられる。
出典
- 消費者庁「デジタル取引・特定商取引法等検討会 中間取りまとめ」(令和8年9月10日) https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/meeting_materials/review_meeting_005/assets/consumer_transaction_cms101_260910_01.pdf
- 消費者庁「デジタル取引・特定商取引法等検討会」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/meeting_materials/review_meeting_005/
- 消費者庁「デジタル取引・特定商取引法等検討会 中間取りまとめ 参考資料集」(令和8年9月10日) https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/meeting_materials/review_meeting_005/assets/consumer_transaction_cms101_260910_02.pdf





