農林水産省は9月24日、福井県越前町に対し、特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(地理的表示法)に基づく措置命令を出した。ふるさと納税ポータルサイトにおける表示責任者として、「越前がに」と表示できない商品を同サイトに掲載し続けていたためである。命令は表示の全点検と原因究明を求め、1か月以内の報告を義務づけた。
背景
地理的表示法は、産地と結びついた特色ある産品の名称を国に登録し、登録された名称を基準を満たさない産品に使うことを禁じる制度である。「越前がに」は登録された名称にあたる。景品表示法とは別の法律であり、所管も農林水産省である。
農水省の公表によると、越前町はふるさと納税ポータルサイトの表示責任者として、少なくとも令和2年9月から令和8年4月までの間、「越前がに」と表示できない福井県産ずわいがに(水がに)を原材料に過半を超えて混入した商品を、「越前がに」と表示して掲載し続けていた。あわせて、返礼品の協力事業者による表示も確認されている。「越前産水がに」「越前水がに」「越前産ずわいがに」、紅ずわいがにについて「越前産紅ずわいがに」「越前紅ずわいがに」、黄金がにについて「越前産黄金がに」といった表記である。
命令の内容は5点である。登録された名称を使った全産品の表示点検と違反表示の除去、原因の究明と分析、職員および中間事業者・協力事業者への啓発と再発防止策、今後の違反行為の禁止、そして1か月以内の農林水産大臣への報告である。
事業者への影響
読み取るべきは、命令の相手が生産者ではなく、掲載ページの文面を管理していた側だったという点である。ふるさと納税ポータルは寄付の仕組みだが、商品ページを作り、名称を書き、注文を受ける構造はECと変わらない。モールに出店する事業者、出品を代行する会社、自社ECを運営するメーカーにも、同じ構図があてはまる。
今日から点検できることは3つある。
- 産地名を含む商品名の棚卸し。地理的表示に登録された名称を使っている商品を洗い出し、登録基準を満たすかを産地の生産者団体に確認する
- 混合品の表示。複数の原材料を混ぜた商品で、基準を満たす原材料が一部にとどまる場合、名称をそのまま使えるかを確かめる
- 表示を誰が書いたかの記録。仕入先の資料をそのまま転記したのか、自社で書いたのかを追えるようにしておく。原因究明を求められたときに効く
加工品や詰め合わせを扱う店は、とくに影響を受けやすい。産地名は訴求力が強く、商品名に入れたくなる。だが登録名称は商標に近い扱いであり、産地が近いという理由では使えない。名称の一部を変えれば回避できるとも限らない。今回、協力事業者の「越前産ずわいがに」といった表記まで確認対象になっている点は重い。
今後の見通し
越前町は1か月以内に報告書を提出する必要がある。報告の内容や、協力事業者への対応がどこまで及ぶかは、現時点で公表されていない。
ふるさと納税の返礼品をめぐる表示は、これまで寄付額との関係で論じられることが多かった。今回のように名称の適正さを問う事例が続けば、ポータル各社が掲載時の確認を強める可能性がある。出品する事業者にとっては、提出書類が増える方向に動くとみられる。
出典
- 農林水産省「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律に基づく措置命令について」(令和8年9月24日):https://www.maff.go.jp/j/press/yusyutu_kokusai/chizai/260924.html
- 通販通信ECMO「ふるさと納税ポータルサイトで不適正に「越前がに」と表示、越前町に措置命令…農水省」(2026年9月25日):https://www.tsuhannews.jp/news/detail/75943





