消費者委員会の「支払手段の多様化と消費者問題に関する専門調査会」は9月16日、報告書を公表した。後払い決済やキャリア決済など、割賦販売法の規律が直接には及ばない支払手段を対象に、制度的な枠組みの検討を求める内容である。9月17日には第500回消費者委員会本会議が開かれ、同報告書などが議題となった。
背景
この専門調査会は2025年3月に第1回会合を開いた。キャッシュレス決済の多様化にともなう消費者問題を検討する場である。報告書が問題の中心に据えたのは後払い決済だった。
報告書によると、後払い決済に関する相談件数は2025年度に約6万7000件で、2021年度から約3倍に増えた。販売信用に関する相談全体が約27万件である。報告書は、相談の多さが支払手段の設計と運用に起因する問題を示すとしている。
キャリア決済については、未払いが通信サービスの停止に直結しうる点を挙げた。生活の基盤である通信料金と、商取引で生じた与信が、同じ請求にまとまることの問題である。
報告書は、支払手段に共通して求められる考え方として次の5点を示した。
- 消費者への情報提供
- 悪質な販売事業者の排除
- 紛争解決への関与
- 過剰な与信の防止
- 生活基盤となるサービスの保護
事業者への影響
EC事業者に影響が出やすいのは、決済の加盟店としての立場である。
第一に、審査の厳格化だ。報告書は決済事業者に対し、悪質な販売事業者が支払手段を利用することを未然に防ぐ取り組みを求めた。後払い決済の業界団体は2022年3月に加盟店審査の自主ルールを定め、2024年2月には加盟店情報交換制度を始めている。制度化が進めば、審査の項目は自主ルールより細かくなる可能性がある。新たに後払いを導入するときの審査期間と提出書類は、今より増える前提で見積もりたい。
第二に、抗弁の接続である。報告書は、商品やサービスが提供されない場合に、その問題を支払の段階へ反映させる考え方に触れた。加盟店の倒産で役務の提供が不能になった場合が例に挙がっている。制度化されれば、未発送やキャンセルへの対応記録は、決済事業者へ説明するための資料として意味を持つ。
第三に、表示である。後払いを選べる決済画面で、支払期日、手数料、遅延したときの扱いがどう書かれているか。特定商取引法の検討会でも最終確認画面の表示が論点になっている。決済まわりの文言は、一度にまとめて点検する時期にある。
いま着手できるのは次の3点である。
- 後払い決済の加盟店契約で、審査項目と更新の条件を確認する
- 未発送・返品・キャンセルの対応記録を、決済事業者に示せる形で残す
- 決済の選択画面と最終確認画面で、支払条件の書き方をそろえる
今後の見通し
報告書は制度の詳細を設計するものではない。実現に向けた枠組みを示す段階にとどまる。今後は所管する行政機関での検討に移るとみられるが、法改正の時期は示されていない。
通販通信ECMOは、9月17日の本会議で建議が決定されたと報じている。本紙は建議の文書そのものを確認できていない。建議であれば、関係する省庁に対応状況の報告が求められる。制度化までには時間がかかるとみられるが、加盟店審査の実務は、業界団体の自主ルールの運用を通じて先に動く可能性がある。
出典
- 消費者委員会「支払手段の多様化と消費者問題に関する専門調査会報告書」(2026年9月16日):https://www.cao.go.jp/consumer/iinkaikouhyou/2026/houkoku/202609_payment_houkoku.html
- 同 報告書本文(PDF):https://www.cao.go.jp/consumer/iinkaikouhyou/2026/doc/202609_payment_houkoku1.pdf
- 同 報告書概要(PDF):https://www.cao.go.jp/consumer/iinkaikouhyou/2026/doc/202609_payment_houkoku2.pdf
- 消費者委員会「第500回消費者委員会本会議の開催について」(2026年9月17日開催):https://www.cao.go.jp/consumer/iinkai/2026/500/kaisai/index.html
- 通販通信ECMO「『後払い決済』『キャリア決済』などに一定のルールを要請…消費者委員会が『建議』」(2026年9月17日):https://www.tsuhannews.jp/news/detail/75933





